Jaybanuan's Blog

どうせまた調べるハメになることをメモしていくブログ

HTML Living Standardとかの「Living Standard」って何?

はじめに

Web系の仕様を確認する必要があって、HTML Living StandardとかDOM Living Standardとかを調べていたが、「Living」というキーワードが馴染みがなかったので、調べてみた。

まずはliving documentについて

例えばWikipediaのような、継続的にアップデートして最新状態にしていくドキュメントのことを言うらしい。 書籍のような、完成版があるドキュメントと対比される。

同様に、継続的にアップデートしたり、時代に合わせて新しい解釈をしたりするものを「living」という接頭辞を付けて呼ぶことがあるようだ。

参考:WikipediaのLiving standardのページ

Web系の標準仕様における経緯

先に少し経緯を書いておく。

標準化団体にありがちだが、Web系の標準化団体であるW3Cも例に漏れず、動きが遅くて標準仕様の更新が停滞していた。 一方、ベンダは自身のプロダクトに継続的に新機能を追加し、日進月歩で磨き上げていくので、W3Cの歩調に合わせていられない。

そこでベンダは2004年にWHATWGという団体を立ち上げて、W3Cの標準仕様で足りないものや曖昧なものに対して、W3Cとは別に改善を行っていった。 これにより、HTMLを含むWeb系の仕様のいくつかが分裂してしまった。

しかしながら、両団体の歩み寄り(?)の結果、2019年にHTMLとDOMについて「Living Standard」という呼び方で、WHATWGの下で仕様を決めていくことで落ち着いた。

Living Standardとは

WHATWGのFAQのWhat does "Living Standard" mean?を見ると、回答の前半で以下のようにある。

The WHATWG standards are described as Living Standards. This means that they are standards that are continuously updated as they receive feedback, either from web developers, browser vendors, tool vendors, or indeed any other interested party. It also means that new features get added to them over time, at a rate intended to keep the standard a little ahead of the implementations, but not so far ahead that the implementations give up.

邦訳すると以下。

WHATWG標準仕様はLiving Standardと言われています。これは、Webデベロッパ、ブラウザベンダ、ツールベンダ、そしてその他のいかなる利害関係者からをもフィードバックを受け付け、継続的にアップデートしていく標準仕様であることを意味します。また、これは時間の経過とともに標準仕様に新機能を追加していくことも意味しますが、標準仕様が実装よりも少し先行している状態を保つような速度であり、実装が取り込みを断念してしまうほどにまで先行することはありません。

つまり、継続的にアップデートしていくliving documentとして、WHATWGが提供する標準仕様のことを「Living Standard」と呼称しているようだ。

そして、FAQの回答の後半で、標準化を優先して歩調を合わせて行くことを丁寧に説明しているのは何とも興味深い。 過去の過ちは繰り返さないという気持ちが滲み出ている。

ちなみに、単語の先頭がそれぞれ大文字になっているので、WHATWGは「Living Standard」を名称(固有名詞)として取り扱っていることが分かる。

蛇足

Standard of Livingと書くと、生活水準という意味になるらしい。